
(2006年10月1日)

「ROBUSKEY」は、プロの写真家やデザイナーといった個人のお客様に向けて開発に取り組んだソフトウェア商品です。5年ほど前、写真シール機に搭載する画像合成技術の開発依頼を、ある企業様からいただきました。あらかじめ用意された数種類の背景画像と撮影した人物写真を合成し、シールにしてその場でプリントするというサービスで一世を風靡した写真シール機ですが、お客様に満足いただける高品質な画像合成のレベルを実現するには多くの苦労がありました。
写真シール機には専属のオペレーターが常駐しているわけではありませんので、狭い撮影環境でフラッシュの状態やさまざまな機器の特性を吸収しつつ、均一なプリントの質をシステムとして実現しなければなりません。また、映り込みの部分をうまく消す必要もあります。このような要件を満たす技術やソフトウェア製品は世の中に無く、試しに既知のアルゴリズムを使って構築してみましたがうまくいきませんでした。まったく新しい発想で一から開発していくしか方法がなかったので、逆に研究の対象としてはたいへん興味深い内容でした。そこで、自社研究として立ち上げ、成果を評価していただき、満足する成果が出たら採用していただくということにしました。自分としては大きな成果を出す自信はありましたが、このような要望を受け入れてくださったこの企業様の寛大さにはたいへん感謝しております。写真シール機は主として女子中高生を対象としています。美しさにこだわる彼女たちの眼はごまかせません。高品質には相当にこだわりました。

さまざまな色の背景を用いて人物を撮影し、画像の解析を繰り返した結果、切り抜きが最も難しいのは毛先と背景の色が混じり合う部分と、半透明なレース地の部分だということがわかってきました。この課題を解決するため、「人」と「背景」の中間色について、物理的な考察を開始しました。また、これと並行して取り組んだのが、人の肌や髪の毛の、とくにエッジの部分に関する統計的な性質の解析です。切り抜きに最も適した背景色はグリーンだということも、この時の解析・研究によって裏付けられたのです。
物理的な考察結果と、統計的な特性を統合して、高品位で自然な画像合成が実現できるISP独自のアルゴリズムが完成したのは、それから約半年後のことでした。
2005年にはこのコア技術を応用して、自社商品の開発に着手しました。その第一弾となったのが「ROBUSKEY」です。写真シール機のような自動的にコントロールされた空間での撮影とは違って、クリエーター様向けにはより幅広い撮影状況が予想されます。ですから商品化にあたっては、グリーンの幕を人物の後ろに張って、光の当て方などを変えながら数多くの撮影を試みています。多少ノイズが残ってもディテールを表現することを優先するのか、あるいはノイズや影をすべてきれいに消してしまうべきか・・・。第一線で活躍されているフォトグラファーやプロのクリエーターの方々にも評価していただきながら、どのような方向性でパラメーターを振っていくかを検討しました。最終的には、背景の抜け具合を3段階で調整できる機能や、輪郭部分の抜け具合を調整するつまみを設け、2006年秋にPhotoshopのプラグインソフトとして本製品をリリースしました。簡単な操作で高品質なクロマキー合成が実現できるROBUSKEYは、このような歩みを経て誕生したのです。