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先輩の仕事:アーカイブズ「プロフェッショナルの仕事」

井上 由香

技術にこだわり全く新しい
『写真シール機』を市場に送り出す

井上 由香Yuka Inoue

1990年入社
事業本部 第2セグメント 副統括マネージャ
戦略企画室長

Profile


理学部 物理学科 出身。
就職活動を進める中、「人にしかできないことをやりたい」「人こそが技術」という 独自の企業理念のもとで高度な技術開発に関われるシステム計画研究所(以下、ISP)に惹かれ、入社。
以来、数々の重要プロジェクトで腕を磨く。リーダーとしても活躍し、入社20年目を過ぎた今も仕事への情熱は尽きない。

挑んだミッション

女子高生の好奇心をくすぐる、新しい写真シール機を開発する。

「これまでにない、全く新しい写真シール機の開発に協力してほしい」。
それが、某メーカーからの依頼だった。
写真シール機は1995年の発売以来、女子高生を中心に大ヒットしているアミューズメント機器。1997年に第一次ブームが到来し、第二の波は2004年暮れから2005年にかけてピークを迎えようとしていた。落書き機能や高画質機能、携帯電話へ画像が転送できる機能が搭載されるなど、製品は次々にバージョンアップが繰り返されている。そんな中、市場に一石を投じる新製品を生み出すべく、ISPに開発の依頼が舞い込んできたのだった。

2005年春、今回の新製品開発に関わるメンバーが集まる全体会議が行なわれた。メーカーの担当者をはじめ、ハードウェア、デザイン、企画、筐体開発…40名強のプロが顔を揃える中、ソフトウェアのプロとして召集されたのが井上率いるISPの技術者7名だった。

リリース予定は12月初頭。充分な時間はなかった。

立ちはだかる壁

はじめてぶつかった、コンシューマ製品ならではの壁。

I議論を重ね、仕様が決定。新緑の季節を迎え、開発は本格化していく。最初に着手したのは、画像処理に関わるフェーズ。画像の美しさは、機種の人気を左右する重要な部分。画像処理の技術を追求すると共に、ハードウェアやOS、使用するカメラなどの多様なデバイス、ユーザーを楽しませる画像や音楽といったマルチメディア素材をも同時に制御しなければならない。各担当者と共に最善策を検討する日々が続いた。

夏を前に、開発も大詰め。ソフトウェア開発の中でも、主にマルチメディア制御とユーザーインターフェースを担当した井上は、大きな壁に直面していた。製品は全国のゲームセンターで利用される。いつでも、どこでも、誰でも簡単に操作できないと意味がない。また、不備が見つかれば、その不備が全機種に反映され、すぐに直すことは不可能に近い。「いかに使いやすく、いかにバグを出さないユーザーインターフェースを作るか…」。その判断が、井上に委ねられた。

こうして乗り越えた!

同じ目標に向かって、全員が一致団結して取り組む。

ハードウェア、筐体、電気担当…各々が意見を出し、それを井上がプログラムへと反映させていく。頭の中では上手くいくはずが、実際に動かすとエラーが出る。何度も何度もテストを繰り返した。「一つひとつの確認作業が完成に繋がっている」。それが井上の原動力だった。

秋になり、最終調整に差し掛かった。社内でイメージ通りに動くかどうかをチェックする。また想定外の入力や操作を行なった際のエラー表示も確認。ユーザーがいつ、どんな時に、どんな入力をするか分からない。あらゆるケースを想定して、バグを抽出。
中には、再現性と法則性の分からないものもあった。しかし全てをクリアにしなければ出荷はできない。また、モニター調査を行ない、ユーザーの反応をうかがった。出てきた問題点を洗い出し、もう一度プログラムを調整する。そこには、新機種開発に関わる全員の思いが込められていた。

そうして———、いよいよ新機種完成の時を迎えた。

そして、今

"仕様通りの開発"ではなく、仕様を踏まえて"期待以上の製品"を生み出す。

井上 由香 メンバーと共に

「ものづくりは、仕事づくり」が井上のポリシー。自ら組み上げた実験機を前に思わず笑みがこぼれる。

完成後、安堵する余裕もないまま、次々とテスト設置が行なわれ、完全リリースへの準備が進められた。徐々に仕事の影響力を実感する井上。そして12月。ついに新機種がデビュー。全国のゲームスポットを席巻していく。こうしてまた歴史が塗りかえられたのである。

「仕様を踏まえてより良い製品を生み出すのが私たちの仕事。『私たちなら、こんなことができます』と提案できれば、それが仕事になる。ものづくりは仕事づくりなんです」。 井上の辞書に、『苦労』という文字はないと言う。手間がかかっても期待以上の成果を残せれば、それは一つの前進であり、大きな学び。そう井上は考えている。

このプロジェクトが終わって数年が経った。写真シール機はさらなる進化を続けている。その進化を支えているのは井上に続く若手社員たちだ。井上は今、自社製品を扱うプロダクトマネージャとして企画・開発・販売を中心に新たな仕事づくりに邁進している。情熱は、尽きることなく。

[en学生の就職情報2015「プロの仕事ドキュメンタリー」より転載]

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